「急な出費が発生したけど、家族や友人には相談できない」
「給料日までのあと数日、乗り切るためのお金があれば……」
「信用ブラックだから、キャッシングやカードローンには頼れない」
そんな切迫した状況で役立つお金を作る方法のひとつに「給料ファクタリング(給与ファクタリング)」があります。
給料ファクタリングは会社員や公務員、フリーターなど勤め人の方なら誰でも、信用ブラックでも利用でき、最短即日の融資に変わる新たなお金を作る方法として2019年頃から注目を集めています。
現在はインターネットを中心に給料ファクタリングのサービスを提供する業者が増えていますが、一方で違法な取引を持ちかける悪質な業者にも注意が必要です。
本記事では給料ファクタリングについて、
- ・ファクタリングの基礎知識
- ・給料ファクタリングの利用方法
- ・給料ファクタリングのメリット・デメリット
- ・違法な給料ファクタリングとは?悪質な業者の見分け方
以上の項目について解説します。
そもそも「ファクタリング」とは?
給料ファクタリングを説明する前に、まずは「ファクタリング」について知っておきましょう。
ファクタリングは、企業が保有する売掛債権を専門の業者(=ファクタリング会社)が買い取って現金化するサービスを指します。
売掛債権とは、企業間の信用取引において商品やサービスを取引先に納品・提供したことにより、1~2ヶ月後に代金を受け取る権利のことです。その売掛債権を売買するファクタリングは、「債権譲渡」や「請求書現金化」などとも呼ばれます。
つまり、将来受け取る予定の代金をファクタリング会社が買い取って早期現金化、入金日に代金が支払われたらファクタリング会社に返すという仕組みです。
ファクタリングは企業が保有する売掛債権(=資産)を売買する契約ですので、カードローンやキャッシングのような借金・借入ではありません。
給料ファクタリングは「給料払いの前倒し」
ファクタリングの「将来受け取る予定の代金を早期現金化する」という仕組みを個人の給料に応用したサービスが、給料ファクタリングです。
給料ファクタリングで専門の業者に買い取ってもらうのは売掛債権ではなく、次の給料(=給料債権)となります。
売掛債権は企業(=債権者)が取引先(=債務者)から商品やサービスの代金を受け取る権利のことでしたが、給料債権は従業員(=債権者)が、勤め先(=債務者)から給与を受け取ることができる権利で、その給料債権をファクタリング会社が買い取ることで契約が成立します。
つまり、将来的に入金が約束されている給料を債権と見なし、これを専門の業者が買い取ることで現金化するという「給料払いの前倒し」が給料ファクタリングの仕組みです。
給料ファクタリングの手数料相場
売掛債権を対象とした企業向けのファクタリングでは、ファクタリング会社が債権を買い取る際に手数料がかかります。
手数料は買い取る債権の額面やファクタリング会社が負担するリスクに応じて変動する仕組みとなっており、売掛債権のファクタリングでは買い取る債権の額面の1~20%が相場です。
では、個人向け給料ファクタリングの手数料相場はどの程度なのか?
インターネット上で個人向け給料ファクタリングサービスを提供するサイトで手数料を調べたところ、おおよその手数料相場は20~40%でした。
たとえば、翌月25日に支払われる給料250,000円を手数料20%で買い取ってもらった場合、振り込まれる現金は
250,000円 - 250,000円 × 0.2 = 200,000円(手数料50,000円)となります。
給料の4分の1~3分の1程度が手数料として差し引かれ、翌月に勤め先より振り込まれた給料をファクタリング会社に振り込まなければならないことを考えると、給料ファクタリングの利用にあたっては決して安くない調達コストを慎重に考える必要があります。
給料ファクタリングの申し込み~振込までの流れ
給料ファクタリングではどのようにして給料債権を買い取ってもらい、現金が振り込まれるのか?
業者によって異なる部分はありますが、おおよその申し込みから振込みまでの流れは以下のとおりです。
- 1.申し込みフォーム・電話・メールで申し込み
- 2.必要書類をメールかFAXで送信
- 3.本人確認・審査
- 4.審査結果の報告
- 5.契約
- 6.振込
基本的に個人向けファクタリングサービスを提供しているファクタリング業者は、給料ファクタリングの契約を結ぶにあたって、勤め先に譲渡契約の通知および契約への同意を求めることがありません。
利用者、ファクタリング会社の間で結ばれる契約形態を、2者間ファクタリングと呼びます。
2者間ファクタリングでは、利用者は勤め先に知られることなくファクタリングの契約が結べるほか、審査に通過すれば最短30分で現金を受け取ることができます。
給料ファクタリングの必要書類
給料ファクタリングの申し込み、審査に必要な書類はおおよそ以下のとおりです。
必要書類 | 目的 |
---|---|
顔写真付の身分証明書
(運転免許証、パスポート等) |
本人確認 |
保険証 | 勤め先の確認、勤め先に在勤中であることの確認 |
直近3ヶ月分の給料明細 or 給料の振込が確認できる通帳のページ |
給料の額面の確認、将来給料の振込が見込めることの確認 |
給料ファクタリングの審査では、利用者本人の返済能力や給料の額よりも、勤め先の信用力が重視されます。
ファクタリング会社は給料債権を買い取った後、翌月に勤め先から支払われる給料を確実に回収できるかどうかを重視するため、「勤務先が給料を払えるかどうか」が重要だからです。
したがって、給料ファクタリングの審査では
- ・利用者が確実に勤め先で働いていること
- ・勤め先に経営不振や倒産の心配がなく、翌月以降も給料が支払われること
が書類によって調査されます。
給料ファクタリングのメリット
給料ファクタリングがカードローンやキャッシングといった他の借りるタイプのお金の作り方と比較して、優れている点を見ていきましょう。
急な出費や支払いに対応できる|メリット①
銀行や消費者金融等の個人ローンは収入証明書や勤務先への在籍確認が必要となる場合もありますが、給料ファクタリングは基本的に手元にある書類さえ揃えば、最短30分で現金が振り込まれます。
調達した現金の使途は問われないため、「急に決まった出張で現金が必要になった」「明日までに税金の支払いが必要」といった急な出費や支払いにも柔軟に対応できるでしょう。
借入ではない|メリット②
ファクタリングはキャッシングやカードローンといった借入(金銭消費貸借契約)ではなく、債権という資産を売買する債権譲渡契約です。
借入の場合は金利の返済を伴いますが、ファクタリングの支払い方法は原則一括払いで、金利が発生しません。
さらに、借入ではないというとは、融資を受けられない方や自己破産などで借入できない方でも利用できるということです。
個人信用情報機関に登録されることもないため、将来的に住宅や自動車ローンを検討している方でも安心して利用することができます。
フリーターや主婦でも利用できる|メリット③
給料ファクタリングは給料債権さえあれば、定職に就いていないフリーターの方であっても利用できます。また、専業主婦の方でも配偶者の方が働いていれば、申し込みが可能なファクタリング会社も存在します。
信用情報ブラックでも利用できる|メリット④
借入の審査では個人信用情報機関に照会して、多重債務や返済遅延、債務整理といったブラックリストに登録されていないかどうかを確認します。
いわゆる「信用情報ブラック」の方は、借入の審査に通過することが非常に困難です。
給料ファクタリングは借入ではないため、審査時に個人信用情報を照会することがありません。
信用ブラックで金融機関からの融資が受けられない方でも、給料ファクタリングであれば利用することができます。
総量規制の対象外|メリット⑤
総量規制とは、返済能力を超える過剰貸付を規制、多重債務者を救済する目的で設定された借入金の上限額を規制する法律です。
借入残高が年収の3分の1を超える場合に、原則として返済能力を超えるものとして規制されます。
たとえば、年収300万円の方は原則90万円を超える借金ができません。
給料ファクタリングは借入ではないため、総量規制の対象外です。
たとえ総量規制の上限いっぱいまで借入がある方でも、給料ファクタリングで現金を受け取ることができます。
給料未払いリスクはファクタリング会社が負担|メリット⑥
給料ファクタリングは償還請求権のないノンリコース契約です。
償還請求権とは、ファクタリング会社が買い取った給料債権が、万が一、勤め先の倒産等で回収できなかった場合、利用者にその金額の支払いを請求できる権利を指します。
その償還請求権がない(ノンリコース)ということは、次回の給料日にファクタリング会社に入金すべき給料が振り込まれなかったとしても、利用者には弁済の義務が一切無いということです。
ただし、ファクタリングの審査で勤め先の財務状況が悪化していることが明らかになれば、給料債権の買い取り自体を断られる可能性があります。
給料ファクタリングのデメリット
給料ファクタリングには看過できないデメリットもあります。メリットとデメリットの両方を比較した上で利用を検討しましょう。
ファクタリング手数料がかかる|デメリット①
給料ファクタリングを利用するにあたって、給料の額面に対し20~40%の手数料がかかることはすでに説明したとおりです。
ファクタリング手数料をキャッシングやカードローンの金利に置き換えるとどうなるでしょうか?
仮に給料250,000円を手数料20%で買い取ってもらった場合、手数料として50,000円が差し引かれます。
これを返済期間30日の借入に当てはめて金利を計算すると、50,000円は年利243.9%に相当します。
利息制限法で10万~100万円の制限利率は年利18%と定められているので、年利243.9%は法外な利率となるのです。
前述の通り、ファクタリングの手数料は買い取る債権の額面やファクタリング会社が負担するリスクに応じて変動します。
一般的な会社員の1ヶ月の給料は高くても50万円程度ですので、1回で100万円以上の売掛債権を売買する法人向けファクタリングに比べると、給料ファクタリングの給料債権の額面は小さく、さらに給料ファクタリングの「給料は勤め先から利用者(従業員)の口座に振り込まれ、利用者自身がファクタリング会社に給料を入金する」という性質上、ファクタリング会社が勤め先から直接回収するよりも未回収リスクが高く、リスクプレミアムとして手数料を上げざるを得ないのです。
言うまでもなく、ファクタリングは借入と違うため貸金業者が遵守すべき利息制限法や貸金業法の適用外ですが、現金が必要だからといって給料ファクタリングをむやみに利用していては、遅かれ早かれ破綻してしまいます。
分割払いができない|デメリット②
ファクタリングは借入でないため金利は発生しませんが、支払い方法は次回の給料での「一括払い」に限定されます。
たとえば、2月28日に3月25日に振り込まれる予定の給料25万円を手数料20%で現金化(手元に残る現金20万円、手数料5万円)した場合、3月25日に振り込まれた給料25万円は、全額ファクタリング会社に入金しなければならないため、手元に残る20万円で4月25日の給料日までやりくりしていかなければなりません。
4月25日に振り込まれる分の給料もファクタリングで現金化できますが、無計画な利用はファクタリングへの依存を招きます。
悪質な業者も存在している|デメリット③
総量規制で借入が制限されている、信用ブラックで借入ができない人たちをターゲットに、SNSなどで高額な手数料の給料ファクタリングを持ちかける事例が散見されています。
参考:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52860000S9A201C1ACYZ00/
日本ファクタリング業協会のホームページには、「50%超の手数料が請求された」「支払いができないと告げたら荒い口調で圧力を受けた」といった被害の相談が寄せられており、消費者生活センターや弁護士会なども注意を呼びかけています。
給料ファクタリングを扱う業者自体はまだまだ少ないものの、「給料を前借りしたい」という消費者のニーズは高まっており、将来的に一般化していく可能性もあります。
しかし、近年の貸金業法や利息制限法の強化によって闇金融業者が貸金業からファクタリング業にシフト、「給料の前借り感覚」を宣伝文句に、法外な手数料のファクタリングを提供している事実は看過できません。
「最短5分で融資」「合法な給料ファクタリング」といった書き込みや広告を見つけても、実績や第三者の口コミ評判などがない業者には注意しましょう。
違法な給料ファクタリングを見抜くには?関連法律で検証
給料ファクタリングはサービスが開始されてから日が浅く、先ほど紹介したようなトラブルも少なくないため、合法か違法か、優良業者か悪質業者かの見分けが難しい面があります。
民法や労働基準法などの関連法律から、給料ファクタリングの合法性、違法性を検証してみましょう。
給料債権の譲渡は違法ではない
債権譲渡じたいは民法第466条の規定によって「債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。」と規定されています。
つまり、性質上譲渡が許されないとき以外は譲渡できるということです。
「性質上譲渡が許されない」とは、法解釈や過去の判例から、
- ・性質上譲渡できない
- ・法律上譲渡が禁止
- ・当事者が譲渡を禁止
が該当します。
給料債権は上記のいずれにも関与しないため、譲渡じたいに問題はありません。
利息制限法を超える手数料は合法か?
給料ファクタリングの違法性を論じるとき、「高額な手数料を請求して、実質的に貸付のようなサービスを提供しているため、貸金業法や利息制限法に違反しているのではないか」という声が挙がるのは事実です。
ファクタリングは貸金ではないため、銀行や消費者金融会社などが遵守すべき貸金業法、利息制限法、出資法の制限を受けません。
給料ファクタリングの手数料は、ファクタリング会社が負担する債権の回収リスクをもとに算出されるリスクプレミアムとして設定されています。リスクに対する適正な手数料であれば違法とはなりません。
したがって、リスクに対する適正な手数料として契約時に手数料を差し引いておきながら、支払いが間に合わなかったからと言って延滞料金や遅延損害金を請求するのは違法です。
労働基準法第24条「賃金支払いの原則」
給料ファクタリングは利用者とファクタリング会社の2者間で取引されます。
万が一、利用者が買取代金を支払えなかった場合にも、ファクタリング会社は勤め先に支払いを請求したりすることは原則ありません。
これには、労働基準法第24条「賃金支払いの原則」が関係しています。
第二十四条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。(以下略)
勤め先は従業員に対して給料を直接支払う義務を負っており、従業員以外の第三者に債権を譲渡することが認められていません。
つまり、ファクタリング会社が買取代金の支払いを勤め先に請求することは「賃金支払いの原則」に違反する行為となるのです。
通常の給料ファクタリングは2者間ファクタリングの「勤め先から通常どおり支払われた給料を、利用者自身がファクタリング会社に入金する」方法を採用しているため、賃金支払いの原則には違反していません。
労働基準法第17条「相殺禁止の原則」
労働基準法第17条は、労働者が何らかの理由で前借りしたお金を、給料から差し引くことなどを禁止しています。
第十七条 使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない。
これを給料ファクアリングに当てはめて考えると、「勤め先は従業員がファクタリング会社に入金する買取代金分のお金を、給料と相殺することはできない」となります。
利用者がファクタリングの買取代金を支払えないからといって、ファクタリング会社は勤め先に買取代金を請求することはできず、また勤め先も「相殺禁止の原則」により、従業員の給料と買取代金を相殺することはできないのです。
労働基準法第24条、第17条の規定により、ファクタリング会社が勤め先に買取代金を請求する行為は違法となります。
給料ファクタリングは特定商取引法の規制を受ける
特定商取引法(特定商取引に関する法律)とは、事業者による違法・悪質な勧誘行為等を防止し、消費者の利益を守ることを目的とする法律です。
給料ファクタリングは特定商取引法の規制を受けるため、業者には以下の行為が義務付けられています。
- ・重要事項を記載した契約書を利用者へ交付すること
- ・勧誘を始めるまえに勧誘目的であることや事業者名を伝えること
- ・虚偽・誇大広告の禁止
特定商取引法に該当しない行為でも、「返済(買取代金の入金)までの期間が短期間」「家族や親族など契約に不要な連絡先の要求」といった行為を受けた場合、明らかな悪質業者であるため、どれだけ好条件を提示されても取引してはなりません。
現在のところ、労働基準法や特定商取引法を遵守して営業しているファクタリング会社が提供する給料ファクタリングに違法性は無いと言えます。
だだし、悪質な業者や実害を受けた被害者の存在が明るみに出ていることからも、給料ファクタリング自体が違法になったり、行政処分が行われたりする可能性は十分に高いと理解しておきましょう。
給料ファクタリングに関するQ&A
Q.ボーナスは給料ファクタリングで買い取ってもらえますか?
- A.ボーナス(賞与)は一定額の入金が見込める給料とは異なるため、原則買い取ってもらえませんが、ボーナスを買取対象としているファクタリング会社もあります。
- Q.買取代金の支払いができなかった場合、遅延損害金や違約金は取られますか?
- A.取られません。支払いが遅れた場合に遅延損害金や違約金など追加で料金を請求する業者は違法です。
- Q.ファクタリング手数料はどうやって決まるのですか?
- A.ファクタリング会社の未回収リスクによって決まります。たとえば、「勤め先の社会的な信用力が高い」「次の給料日までの期間が短い」など、未回収リスクが低いと判断されれば手数料が抑えられる傾向にあります。
- Q.会社に就職して1ヶ月目なのですが、給料ファクタリングは利用できますか?
- A.給料ファクタリングに申し込むには、「直近2~3ヶ月の給与明細および給料の入金が確認できる通帳」が必要です。勤続1ヶ月目でまだ給料が支給されていない場合は断られる可能性があります。
給料ファクタリングはリスクも天秤にかけた上で利用を
給料ファクタリングは現金が必要なときに「給料払いを前倒し」できる便利なお金を作る方法ですが、優良業者・悪質業者に限らずリスクがあります。
その最たるものが「手数料」で、利息制限法に規定された年利に換算するまでもなく、給料ファクタリングの手数料相場20~40%は決して安くない調達コストです。
今すぐ現金が必要な状況であっても、キャッシングやカードローンが利用できるのであれば、それらを利用されることをおすすめします。
どうしても給料ファクタリングを利用せざるを得ない場合には、業者のホームページや口コミ評判などを参考に、本当に信頼できるファクタリング会社なのかをチェックするようにしてください。